妊婦と歯の治療

胎児の発育段階におけるリスク

妊娠12週までの期間を器官形成期といいます。胎児の主たる器官は形成を終わり、その後は、体の成長がメインになります。
特に、妊娠4~8週の間に、脳・神経・心臓・血管・消化器・四肢といった、からだの主要部分が形成されます。この期間は、胎児にとって最も危険な時期だと言えます。
妊娠12週を過ぎると、奇形などの胎児に対する危険はかなり減少します。また、胎盤もほぼ完成するため、流産の危険も減少します。一方、妊娠後期になりますと、治療による痛みなどがきっかけとなって、早産の危険が生じてきます。
そこで、妊娠4ヶ月~7ヶ月を安定期として、この時期の歯科治療をお勧めします。

レントゲン撮影の放射線量

妊婦の方は、レントゲンを撮影すると、お腹の赤ちゃんに悪い影響が出るのではないかと不安に感じることと思います。
悪い影響としては、死亡・奇形・精神発達遅滞・発ガンなどがあげられます。
このうち、死亡(流産)は、着床完了までの妊娠初期(3週まで)に問題となり、50~100ミリシーベルトを浴びると危険とされています。
奇形については、妊娠4~12週で問題になり、100ミリシーベルトを超えると危険とされています。
精神発達遅滞は、妊娠10~27週で、120ミリシーベルトを超えると危険とされ、知能低下の程度は被爆量に比例し、1000ミリシーベルトでは、IQが40程度低下するという報告があります。

歯科のレントゲンには、お口の全体を撮影する「パノラマ」と、お口の一部を撮影する「デンタル」があります。
お口全体を撮影するパノラマの方が放射線量が多いかと思えますが、実はこの2つはほとんど同じなのです。
では、デンタル1枚でどの程度の放射線量かというと、約0.04ミリシーベルトといわれています。
これが、当院で採用しているデジタル式になると、4分の1以下になりますので約0.01ミリシーベルト程度になります。
実際のレントゲン撮影では、腹部に防護服をつけます。これでほぼ100パーセント放射線をカットするといわれています。
もちろん、歯科のレントゲンはお口の中に向けて放射しますので、おなかの赤ちゃんに届く放射線量はほぼ0だと言えます。
安心して治療を受けてください。

妊娠性の歯肉炎

妊娠してから歯磨きをした時に出血が多くなったという妊婦の方が時々いらっしゃいます。
これは、妊娠性の歯肉炎といって、妊娠によるホルモンバランスの変化によって、歯肉炎に対する体の防御力が低下したためと考えられています。
抵抗力が低下しているわけですから、より徹底したブラッシングが必要になります。
歯肉炎は、感染症であり、原因菌は、歯垢(プラーク)という白くねばねばしたものの中にいます。
この歯垢を歯ブラシで、できる限り除去し、菌の数を減らせれば、歯肉炎は治癒します。
あくまで、歯肉に付着したプラークが対象なので、歯と歯茎の境を、優しく丁寧にブラッシンッグしてください。
強くやりすぎると、歯肉に傷がつき逆効果です。
虫歯と違い、正しいブラッシングで、ほぼ完治します。ブラッシング指導をご希望の方は、遠慮なくお申し出ください。

痛みや自覚症状がなくても一度検診を受けましょう!!

安定期に一度検診を受ることをお勧めします。
まれに「妊娠中は、歯の治療を受けない方が良い!」という方がいますが、妊娠中にこそ虫歯や病気が進行する傾向があります。
歯が痛む時・歯ぐきの腫れや出血がある場合は早めに受診し、妊娠していることを伝えたうえで治療を受けるようにしてください。
また、虫歯や歯周病は自覚症状が出た時にはかなり進行しています。
痛みがなくても初期虫歯や歯肉炎であることもあるため、安定期に入ったら一度受診することをお勧めします。